2018/11/23
ふぉん
仕事でお客さんの電話を取りまくるのですがみな個性が強い。
とある常連のおじいさんがいる。
今日は入れ歯がフィットしてるなとかが声の聞き取りやすさでわかる。タフグリップがキマッてない日はとにかくフガフガしている。
このおじいさんからある一時期、必ず屋外から、どうさがせばいいか難しいもの探せという内容の電話がよくかかってきて、屋外は背景の音がすごいし、フガフガだし、おじいさんもこちらにきこえるようにと、受話器のマイクにめちゃくちゃ口を近づけて大きい声を出すので音割れするしで、意思を持った暗号生命体と疎通をこころみているような気がしてくる。
絡んだ糸はほぐせそうなところから始めるしかない。よかれと思っての行為であるのに申し訳ないことだが、受話器から少し口を離して喋っていただけるようにお願いをするのである。
素のアナログ電話感覚がなくなるのがもったいない。
またある時は、話をきいてるうちにこちらが日々の疲労からかボンヤリしているかのような状態になり、やばいやばい、日本語がわからない!と青ざめはじめたら、日本語ではなく、ドイツ語の単語を言ったのちに、単語の綴りをアルファベットで一文字一文字ゆっくりと説明してくれはじめていたのだった!ということもあった。おじいさんからは何が飛び出すがわからない。
それからは母音とイントネーションをよく聞くように気をつけた。
自分の仕事の守備範囲の単語内に正解があるので、質問ゲームのような感触がハマる。
わからないときは、わからなさにイライラされて怒られてもしかたないぐらい聞き返すが、おじいさんはあきらめて怒り出したりせずに何回も言ってくださる。おじいさんは精神がつよい。
○○ですね! とようやく正解を言うと、
ふぉん(うむ)
と必ず言われるのだが、
ふぉん
の後、次の言葉を言う前にかならず
1秒ぐらい 味のある間がある。
その間に、じじいの大切な寿命を感じる。
私は職務として自分の性能を上げねばならない。
可能なら
もしもし、
とおじいさんが言って、次に本題を発する前に
○○ですね。かしこまりました。
と言ってみたい。
と言った後の、
ふぉん!!!!!!?!!
をきいてみたい。

(↑ミスティかたやまさんにもらったとある作家さんのてづくりのヌコ。味のある表情に目が留まる瞬間に息が抜ける間がうまれる。)